お城の基礎知識
城郭とは
城郭の定義としてよく言われるのが、「城」という字を構成している「土」偏に「成」ると
いう字から「土で成る」、つまり土塁で守られたものとされている。しかし、近世におい
ては石垣に変わってしまったためこの定義は当てはまらなくなっている。
一般的には、敵の攻撃に対して領地や領民を守る施設を「城」としている。
城作りの要素
築城には次のような要素があります。
(1)地選(じせん)・・・地取り
場所をどこにするか地理的条件の選択
(2)縄張り(なわばり)・・・経始
どのようにして敵の攻撃からから守るか、構想を練る。
(3)普請(ふしん)・・・土木工事
土塁、石垣、堀などの構築
(4)作事(さくじ)・・・建築工事
天守閣、櫓、城門などの構築
日本のお城の数
古代から近世の間に築かれたお城の数は、城・要害・砦・堡塁・陣屋・城柵・神籠石
・チャシ・グスクなどの防備を目的とした施設は、記録に残っているだけで2万5千
以上あるとされています。(4万を超すと言われる方もおられるようです)
お城の分類
分類の仕方にもいろいろあるが、地形的に分類すると次のように分類することができる。
山城(やまじろ)
中世から戦国時代の城郭によく見られ、険しい山の斜面に守られ、要所をよく見渡せ
る山の上にあるお城。
丘城(おかじろ)
小高い丘の上に築かれたお城。
平山城(ひらやまじろ)
小高い山や丘と平地を包括した山城と平城の折衷式のお城。
平城(ひらじろ)
近世に多く見られ、平地に築かれて水堀や石垣などで防御している。
海城(うみじろ)
海を防御に利用しているお城。
水城(みずじろ)
湖沼を防御に利用しているお城。
縄張りの分類
輪郭式(りんかくしき)・・・囲郭式ともいう。
平城に多く見られ、本丸を中心に同心円形あるいは回字形に二の丸・三の丸を
配した構成となっている。(例:大阪城、名古屋城など)
連郭式(れんかくしき)
尾根上に築かれて山城に多く見られ、本丸を中心に前後あるいは一方に直線的
に曲輪が繋がる構成となっている。(例:備中松山城など)
梯郭式(ていかくしき)
本丸の虎口を出たところに二の丸。二の丸の虎口を出たところに三の丸と、ハ
シゴ状に虎口を配した構成となっている。平山城に多く見らる。
(例:熊本城、会津若松城など)
並郭式(へいかくしき)
本丸と二の丸を並べて配置し、その周りに三の丸を配している。
螺旋式(らせんしき)
本丸を中心に、螺旋形に曲輪を配している。(例:江戸城、姫路城など)
稜堡式(りょうほしき)
横矢掛かりの一種で、屏風折りがなされている。(例:五稜郭、龍岡城など)
併用式(へいようしき)
これらの縄張りを組み合わせた曲輪の配置がされている。(大垣城、松本城など)
縄張りを構成する要素
曲輪(くるわ)
城内に配置された小区画で、その役割や機能によって配置されている。
本丸(ほんまる)
お城の中心となる曲輪で、天守閣や櫓などが建造されている。中世・戦国時代に
は「根城」「実城」「本城」「一の曲輪」「構の内」などと呼ばれていました。
天守曲輪(てんしゅぐるわ)
天守を中核に小天守や櫓あるいは蔵などが配されていました。
二の丸(にのまる)
本丸の周囲あるいは隣接して配置され、殿舎(城主の居館)・藩庁・諸役所など
が設置されていました。
三の丸(さんのまる)
二の丸の外側あるいは隣接して配置され、役宅(重臣の屋敷)・馬場・厩などが
置かれていました。
西の丸(にしのまる)
城主の隠居所あるいは世子の居館が置かれており、本丸の西側に配されていま 詰の丸(つめのまる)
戦闘時における最後の拠点で、普通本丸の背後にある山に築かれており、本城
が攻め落と されそうになったときに立てこもり籠城するためのものです。
帯曲輪(おびぐるわ)
大きな曲輪の外側を細長く取り囲んだ曲輪。
虎口(こぐち)
城の出入り口を虎口といい、敵の侵入を防ぐため様々な工夫がなされている。
一文字虎口(いちもんじこぐち)
虎口の前あるいは後ろに一文字状の遮蔽を設け、敵の直進を防ぎ、外か
ら中が見えないようにしている。
馬出虎口(うまだしこぐち)
虎口の前に馬出を設けられている。
巴虎口(ともえこぐち)
巴の字形に屈曲した虎口。
並虎口(ならびこぐち)
二つの虎口を隣接して設けたもの。
無虎口(むこぐち)
土塁や石垣の曲がりによって外から虎口が見えないようになっている。
喰違虎口(くいちがいこぐち)
左右の堀や土塁を食い違わせることによって、S形の通路を作って虎口
としたものである。
枡形虎口(ますがたこぐち)
方形の堀や土塁を配して虎口としたもので、二つの出入り口を通る仕組
みになっている。
馬出(うまだし)
城門の前に配置された小さな曲輪。敵の攻撃から虎口を守り、城兵の出入りを助ける施設。
的土馬出(あづちうまだし)
虎口の前に一文字形の土居を築いただけの馬出。
丸馬出(まるうまだし)
的土馬出と同じように、虎口の前に半円形の土居を築いた馬出。
角馬出(かくうまだし)
四角形をした馬出であり、近世城郭のほとんどが角馬出となっている。
重馬出(かさねうまだし)
馬出が前後に重なっており、城内に内枡形がないときに作られた。
辻馬出(つじうまだし)
二つの虎口の向きが直角に交わっているときに、一つの馬出で両方の
前を守ることがきるもの。
卍馬出(まんじうまだし)
土居と堀を卍形に屈曲させた馬出。
横矢(よこや)
横矢掛かりともいい、虎口や土塁・石垣に近づく敵を横から射るために設けられた屈曲で、
死角をなくするために様々な工夫がなされている。
城郭の構成要素
天守(てんしゅ)
お城の中心となる建造物であり、中世においては敵の攻撃を見張り、戦いの指揮を執るための
眺望性が重視されたが、近世になると権威の象徴としての威厳性が重視 されるようになった。
現在も残っている天守
櫓(やぐら)
見張りおよび武器や食料を保管するための建造物で、中世では「矢倉」「矢蔵」と書かれて
ていました。
城門(じょうもん)
虎口の防備を固めるため城の出入り口にたてられた建造物であり、敵の攻撃をもっとも
受けるところでもある。
枡形(ますがた)
虎口の防御施設であり、塁で四角に囲った区画をいう。「枡形虎口」はもっとも発達した
虎口で、近世城郭においてはほとんどのお城で採用している。
御殿(ごてん)
城主の居館であり、中世では城外に居館を構えていたが、戦国時代になると城外では危険
となったため城内に建造するようになった。
蔵(くら)
保管するものによって、「焔硝蔵」「金蔵」「米倉」「塩蔵」「武具蔵」などがあった。
橋(はし)
城内と城外、あるいは曲輪と曲輪を連結するためのもので、木橋・土橋・石橋などが
ある。
石垣(いしがき)
敵の侵入を妨ぐものとして石を積み上げて壁としたものであり、石の積み方には「野面積」
「打込ハギ」「切込ハギ」「乱積み」「布積み」などがあり、時代とともに変化している。
土塁(どるい)
土居ともいわれ、堀を掘った土を城内あるいは曲輪内に盛り上げたものであり、従って
土塁と堀は対をなすものである。大別して「敲土居」と「芝土居」がある。
堀(ほり)
土塁や石垣とともに敵の攻撃を妨げる重要な防御施設であり、防衛力を虎口に集中する
ことができる。近世城郭ではほとんどが水堀である。
塀(へい)
防御施設として土塁の上に設けられたものと、城内の仕切としてのものがある。板塀は火に弱い
ため、漆喰を塗ったものや土で作られた土塀などもある。
壁(かべ)
真壁造(まかべつくり)
荒壁の上に漆喰を塗り、柱や長押を露出したもの。
大壁造(おおかべつくり)
柱や長押などすべてを塗り込め、表面を滑らかなものにしたもの。
下見板張(したみいたばり)
塗り土壁の下部を板張りにしたもので、壁土の剥落を防いでいる。
狭間(はざま)
塀や建物の外壁などに設けられた、矢や鉄砲を発射するための小窓で、使用する
武器により「矢狭間」「鉄砲狭間」「大砲狭間」という。
構造的には、城内側は広く、城外側が狭くなっている。